本年3月29日、「あきたこまちR」問題を考える実行委員会は、重イオンビーム放射線育種「あきたこまちR」への秋田県での2025年全量転換に対し、【「あきたこまち」をどう守る?】と題した東京集会を開きました。
▼告知チラシ
https://drive.google.com/file/d/1DfdMdSHX_4nj_e0Dsh-P9kuGb3jnp3_G/view?pli=1
筆者もオンラインで参加しましたので、以下、報告として情報提供します。
まず、本集会では5名の方から問題提起がなされました。
- 「重イオンビーム放射線育種米が登場した背景」
…… 印鑰智哉(OKシードプロジェクト事務局長) - 「重イオンビーム育種照射による品種改良 何が問題か?」
…… 河田昌東(分子生物学者 / 遺伝子操作食品を考える中部の会代表) - 「『あきたこまちR』の食品表示問題とは?」
…… 久保田裕子(日本有機農業研究会副理事長 / OKシードプロジェクト共同代表) - 「『あきたこまちR』って何? 〜食の市民自治〜」
…… 谷口吉光(秋田県立大学教授) - 「秋田の農家から」
…… 相馬喜久男(秋田県有機農業推進協議会会長)
すでに本集会の動画が公開されています。
▼「東京集会の動画」OKシードプロジェクト(2時間21分)
https://www.youtube.com/watch?v=yl2q3f2BkLg
以下には、これまでの経緯を含めた情報が詳細にまとめられています。
▼「重イオンビーム放射線育種米問題を考える」OKシードプロジェクト
https://okseed.jp/radiation/entry-230.html
これらをご覧いただければ、どのように重イオンビーム放射線育種米が生まれ、なぜ推進されようとしているのか、その問題点や懸念、矛盾点を理解することができますが、以下に東京集会の内容を簡単にまとめましたので、まずはこちらからお読みください。
【重イオンビーム照射米とは】
種子に強い放射線を照射して遺伝子を破壊してから、特定の遺伝子が破壊された種子を選別し、元の種子と「戻し交配」して新品種を開発する方法です。
▼「重イオンビーム育種とは」OKシードプロジェクト(動画あり)
https://okseed.jp/news/radiation/entry-226.html
【重イオンビーム放射線育種「あきたこまちR」のメリットとは】
- 土壌からのカドミウム吸収が抑えられるため、カドミウムをほとんど含まない米になる
- 国際基準改定に対応できるレベルとなる ⇒ 輸出に有利
【デメリット】
- マンガンの吸収が抑えられるため、微量栄養素マンガンをほとんど含まない米になる=この米を食べ続けた場合、米からマンガンを摂取することができなくなり、健康に影響する可能性がある
- 収穫量が減る ⇒ 農家の減収
- 種もみに特許料がかかる ⇒ 生産コスト高
- 自家採取不可=毎年種もみを買う ⇒ 生産コスト高
【その他の懸念事項や矛盾点】
- 食べ続けた場合の健康への影響(マンガン不足以外にも)が不明
- 環境に与える影響が不明
- 土壌のカドミウム除去対策ではないので、野菜などコメ以外の作物のカドミウムは防げない
- 農水省の汚泥肥料の推進により、汚泥からカドミウムやPFASが農産物に吸収されるおそれがあることは問題にされていない
【地元秋田県ではどういう状況なのか】
地元秋田県の状況を、2名の方が報告されました。また質疑の時間にも回答がありました。
- 秋田県議会の11テーマに関する意見募集に関して6千件の意見が寄せられ、その大半が「こまちRの全量転換」に関するもの(5883件)であり、その内で県外から寄せられたものが5281件であった
- 圧倒的に懸念や否定的意見が多かったにもかかわらず、県庁は意見を変えるに至らなかった
- 市民が計画の見直しを求める8千筆の署名を県に提出した。その他さまざまな市民による運動が行われた
- 県庁は、住民アンケートを取らない
- 県は安全性や全面切り替えの必要性を県内の生産者や消費者に周知させるという活動を非常に積極的に実施
- 「あきたこまち」と「あきたこまちR」は同じものだというPRを推進している
- 県庁の対応「国が推進しているのだから安全だろう」
- 県会議員はほぼ誰も発言せず
- 地元新聞社のアンケート調査では、県議会および市町村議会の議員の中に反対者はほとんどいなかった
- 秋田県有機農業推進協議会(代表以下13名)が反対意見表明
【実はターゲットは全国】
この重イオンビーム放射線育種米を全国の主要品種としていくとする指針を農水省は2018年に立てており、来年度概算要求にも2025年までに3割(14都道府県)での導入を目標にしています。「あきたこまち」を皮切りに日本のお米が重イオンビーム放射線育種米に変わってしまう可能性があります。
【他府県の状況は】
(「東京集会動画」1時間47分~)
- 兵庫県では2027年にコシヒカリ環1号の導入が検討されていたが、現在は導入時期「未定」
- 宮城県は全国で最初に実施しようとしていた。3品種作った内2品種は今後いつ導入されるかわからない
- 山口県は5品種作った内の3品種については、いつ始めるかわからない
- 宮城県と山口県は情報を公開しているが兵庫県は公開していない。公開していない県については状況が全くわからない
- 現在、重イオンビーム放射線育種米の導入に向けて動いていることがわかっているのは秋田県、宮城県、山口県、兵庫県の4県
- 埼玉県は栽培実験まではしたが、うまく行かなかった
- 重イオンビーム放射線育種米に共通して言えるのは収量不足になること
- 商業栽培が2021年に始まった石川県では、収量が低下したため、22年には生産量が半減し、23年には生産者がゼロになった
【あきたこまちRの種もみを作り続けるにはあきたこまちの種が必要】
(「東京集会動画」2時間01分~)
あきたこまちRの種は一度作ればいいというわけではなく、何度も作っていきます。あきたこまちRを作るには従来のあきたこまちの種が必要です。だから、あきたこまちの種はあるのです。なぜ、それを農家に分けてくれないのでしょうか。コストがかかるから、というのが秋田県の回答です。
【さいごに――主催者より 東京集会アピール】
(「東京集会動画」2時間15分~)
この集会で、従来の「あきたこまち」の種籾生産・提供の再開などを求める以下の行動アピールが採択され、全国に向けて発信することになりました。
「あきたこまち」をどう守る? 東京集会行動アピール
これまでどおり「あきたこまち」を食べ続けたい、つくり続けたいという声を受けて、私たちは「『あきたこまち』をどう守る? 東京集会」に集いました。問題は多岐にわたり、すべてを網羅することはできませんが、次の6つの要求項目と4つの行動提案が浮かびあがりました。
秋田県が進めている放射線・重イオンビーム育種により遺伝子を改変された「コシヒカリ環1号」及びその遺伝子を受け継ぐ「あきたこまちR」の導入に対して、そしてまた、「コシヒカリ環1号」系統の他都道府県への導入について、私たちは以下のことを国や秋田県などの地方自治体に求めます。
- 「コシヒカリ環1号」「あきたこまちR」などの重イオンビーム育種品種に関して、安全性の確認、規制を求めます。
- 地方自治体が重イオンビーム育種品種へ全量転換することは従来の品種の栽培を求める農家のタネの権利を侵害するので、撤回・中止を求めます。
- 重イオンビーム育種の品種名を伏せて銘柄名で販売することは消費者の知る権利を侵害するので、撤回・中止を求めます。
- 有機JAS認証基準において、重イオンビーム育種技術の使用禁止を求めます。
- 地方自治体に対して、消費者や生産者が求める従来品種の種子生産・提供を継続することを求めます。
- 国・地方自治体がカドミウム・ヒ素などによる農地の汚染について十分な調査を行い、長期的かつ総合的な対策を策定・実施することを求めます。
<私たちの行動提案>
これらの要求項目を踏まえ、特に以下の4つについて早急に行動していきましょう!
- 秋田県に従来の「あきたこまち」の原種・種籾の生産・提供の再開を求めよう!
- 「あきたこまち」の生産と販売が続けられるように、消費者は生産農家を応援しよう!
- 「あきたこまち」と「あきたこまちR」は同じでないことを伝えよう!
- 学校給食に、重イオンビーム育種の食品を使わないことを求めよう!
- 「あきたこまち」をどう守る? 東京集会参加者一同
「このアピールを受けて、秋田県への申し入れ、消費者庁への要望書提出、学校給食関係機関、流通業者などへの働きかけを今後、行っていきます。この問題をさらに拡げていただきたく、よろしくお願いいたします。」(集会実行委員会より)
「あきたこまち」をどう守る? 東京集会実行委員会
- 秋田県有機農業推進協議会
- 秋田ミネラルオーガニック給食をすすめる会
- 特定非営利活動法人アクシス委員会連合
- 遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
- 遺伝子操作食品を考える中部の会
- 北九州オーガニックプロジェクト
- くまもとのタネと食を守る会
- こうち食と農をまもる連絡会
- 生活協同組合連合会コープ自然派事業連合
- 生活協同組合コープ自然派おおさか
- 生活協同組合コープ自然派京都
- 生活協同組合コープ自然派しこく
- 生活協同組合コープ自然派奈良
- 生活協同組合コープ自然派兵庫
- 種子を守る会香川
- NPO法人 秀明自然農法ネットワーク
- 主婦連合会
- NPO法人 食と農の未来をつくるネットワーク
- 食と農を守る会徳島
- 食べママ(食べもの変えたいママプロジェクト)
- 使い捨て時代を考える会
- NPO法人 日本消費者連盟
- 日本の種子(たね)を守る会
- NPO法人 日本有機農業研究会
- バイオダイバーシティ・インフォメーション・ボックス
- 富士山麓有機農家シードバンク
- 北海道食といのちの会
- NPO法人 民間稲作研究所
- NPO法人 メダカのがっこう
- NPO法人 有機農業推進協会
- OKシードプロジェクト