家族農林漁業プラットフォーム・ジャパン(FFPJ)開催の第4回オンライン連続講座(6月25日開催)の文字起こしと動画および付属資料が公開されました。講師はFFPJの二平章副代表(JCFU全国沿岸漁民連絡協議会事務局長)でした。
日本の漁業の現状がわかりやすく解説されています。ぜひ御一読もしくは御視聴ください。
▼ 【報告】FFPJオンライン連続講座第4回 日本の小規模沿岸漁業の現状と課題
https://www.ffpj.org/blog/20210707
▼ 日本の小規模沿岸漁業の現状と課題 資料(PDF)
https://uploads.strikinglycdn.com/files/a59428d1-4e3c-462b-8c6f-0594ca7b7f5e/FFPJ%E4%BA%8C%E5%B9%B3%E8%B3%87%E6%96%99.pdf
上記サイトの講演内容や資料を見ると、日本の漁業の経営体の94%を日帰り操業を行う沿岸漁業が占めています。2018年の調査結果では日本の漁業経営体は7万9千あります。その中で10トン未満の小型漁船で魚を獲る経営体が5万7千程度。定置網は3千と少し。養殖業が1万4千程度です。これらを合計すると7万4千経営体で全体の93.8%になります。圧倒的に多いのは小規模沿岸漁業です。その多くが家族で経営や操業を行っています。
漁業権のしくみ、漁獲高の推移、沿岸漁業の中で昔から守られて来たルール等については上記サイトにまとめられています。
【漁業法大改正の問題点】
2017年12月に決議された国連の『家族農業の10年』には、農業・林業ばかりではなく、漁業・養殖も含まれると書かれています。2018年12月に採択された国連の『農民の権利宣言』には、政策策定に関わる意思決定のプロセスに、小規模漁業者に情報提供をして参加を保障すること、また、小規模漁業者には自然資源を持続可能な方法で利用する権利や管理に参加する権利があると書かれています。これがいまの国際的な潮流です。
ところが、日本では2018年12月、70年ぶりに漁業法が改定され、小規模漁業者を排除しかねない動きになりました。この法案は漁業関係者には詳細をギリギリまで明かさないまま国会に提出され、わずかな時間の審議を経て12月8日に成立しました。2020年12月1日施行。
漁業法改定の一番のねらいは、企業が自由に海面を利用し利潤追求の場にできる制度づくりです。大きな問題点は以下の2つです。
<養殖漁業権>
養殖の漁業権免許を知事が企業に直接付与できるようにしました。定置網も知事が県外企業資本などに直接免許できます。企業は地元漁協に所属せずに、共同漁業権の海の一部を占有して、地元漁民を排除しながら定置網も養殖施設も設置できるようになりました。
漁業権が売買可能となり、組合員の漁協離れにより漁協の経営基盤が弱体化したり、漁業権が大企業に買い漁られるおそれがあります。地元漁民による小規模漁業の衰退につながります。
<大型魚の漁獲量割当て>
クロマグロの漁獲可能量は農林水産大臣が割り当てるようになりました。大型巻き網漁船には4500トン付与し、沿岸漁業者には2000トンと半分以下になりました。北海道では定置網に小型のマグロが入ったから違反があったとして、沿岸漁業者全体の枠が6年間ゼロになりました。クロマグロで生計を立てていた小規模沿岸漁船が成形の手段を奪われ訴訟を起こしています。
太平洋クロマグロが減少したのは大型巻き網漁船が大量に獲ったためですが、そのつけを沿岸漁業者が払わされる形です。2018年漁期のクロマグロの漁獲高では、沿岸漁船の0.2%しかいない大型巻き網漁業が77.8%の漁獲実績を上げています。これはあまりにも割り当てが不公平です。
魚が減った、小型化したという声はよく聞かれます。養殖は育てるというイメージで善とされていますが、養殖は大量の餌を必要とします。大型巻き網漁船が沿岸で大量に捕獲した魚が餌になり、さらに沿岸の魚が減るスパイラルが進みかねません。
食生活の変化による消費者の魚離れ、マイクロプラスチックの問題など、消費者にも関わる課題があります。消費者と連携しながら日本の魚食文化や漁業産業を守るための活動を広げて行く必要があるでしょう。
問題点や漁業法改正の経緯がわかりやすく学べる動画を以下に御紹介します。
▼ 漁業法大改正 鈴木教授の問題意識 (漁師を元気にする会)
▼ 令和漁業法その1 改正の背景と経緯 (漁師を元気にする会)
<法律の概要と本文>
▼ 漁業法等の一部を改正する等の法律の概要について 農林水産省 平成30年12月
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/kaikaku/attach/pdf/suisankaikaku-19.pdf
▼ 漁業法等の一部を改正する等の法律(本文)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/housei/19720181214095.htm