2025年(令和7年)3月24日の午後、和歌山市北コミュニティセンターにて、『和歌山市の(稲作)有機農業・自然農業の現状及び取組について』という講演会がありました。




この講演会は、有機農業・自然農業に興味のある方を対象に、和歌山市環境保全型稲作グループと和歌山市農林水産課が協力して開催しました。講演の主な内容は、県内における稲作の生産量が最も多い和歌山市で有機農業や自然農業による稲作に取り組んでいる農家による栽培技術や現状報告でした。
プログラムと講師は以下のとおり。
① 和歌山市の(稲作)農業および有機農業の現状について (和歌山市 産業交流局 農政企画班)
和歌山市のオーガニック給食について (和歌山市教育委員会 保険給食管理課 保険給食班)② 有機農業・市前方行取り組み事例発表
講師:和歌山市環境保全型稲作グループ
・共同代表:神谷 憲次 氏 (紀州大地の会 米部会)
・共同代表:久保 智和 氏 (自然の郷きのくに副代表・自然力栽培久保農家)
・監査役:なかむら いづみ 氏 (和歌山有機認証協会 事務局長理事)
※久保智和氏となかむらいづみ氏は、かぞプラ(FFPW)共同代表幹事です。③ 質疑応答
プログラム①の「和歌山市の(稲作)農業および有機農業の現状について」では、和歌山市は県内で一番の米の産地であり、令和4年度の収穫量は8,010トン(同年の生産量2位は紀の川市の4,370トン)であったこと、市内の遊休農地が増加している状況や、有機農業の取り組み状況(令和5年度は4.4ha、農家数8戸、1法人)などの報告がありました。
「和歌山市のオーガニック給食について」では、令和5年度以降、一部の市立小学校で学校給食に地元産の有機農産物を使用した取り組みについての報告がありました。令和7年度は、オーガニック給食の食材購入予算として222万8千円が割り当てられ、市立小学校給食のお米や副菜の食材に使用される予定とのことでした。
②の事例発表のうち、神谷憲次氏のお話は、「有機農業をやっていて気づかされたことは2つ、自分の五感で判断していいんだ、ということと、多様性は農業でも大事だ、ということです」という言葉に始まり、慣行農業から有機農業に切り換えた理由や、1年間のお米作りの作業内容と重要なポイントの説明がありました。非常に具体的な内容で、気づきやノウハウに満ちていました。
久保智和氏のお話は、会社員から農業に転身したきっかけ、自然農を営みながら独自の取り組みとして、自然農業塾や小学校の子ども達に対する食育、農業体験を主とした活動をされていること、自然栽培の稲作のノウハウなどでした。また、令和6年度の10aあたりの収穫量は7.2俵(無肥料・無農薬・除草剤不使用)と、過去最高であったとのことで、自然農でもお米ができることを実証されました。
なかむらいづみ氏からは、環境保全型農業という言葉の説明(*1)と有機農業の定義、また有機農業の国内における歴史等を簡単に話しました。なお、和歌山市環境保全型稲作グループという団体名は、この講演会にあたり急遽作ったもの、とのこと説明がありました。
このあと、時間いっぱいまで、活発な質疑応答がありました。
参加者アンケートから分かる範囲ですが、参加者のうち、和歌山市内の方は全体の6割、専業・兼業・自給など農に関わっておられる方は全体の約半数でした。
ご意見には、『こうした情報提供の場を今後も継続してほしい』、『フィールドワークを希望する』といった意見が複数見られました。また、『若手の有機・自然農家も巻きこんで参加者を増やしたい』、『新規参入に役立つ行政の取り組みを知りたい』、『これからも和歌山市と連携して大々的に開催してほしい』、『若い参加者が多く驚いた(希望が見えた)』など、具体的かつ前向きなご意見もありました。
参加者数は募集定員30名に当日の飛び込み参加もあり盛況でしたが、既に有機農業・自然農業的稲作を実践されている方々や、行政・農協等の関係者、2月の生産者交流会(https://ffpw.net/2025/03/10/fffpw-news_20250310/)でお見かけした方々が10名以上おられたように見えました。
慣行農業を行っているけれども環境保全型農業(特に稲作)に取り組んでみたいと思っている方や、農業を志す方で有機農業や自然農業に興味のある方などに参加していただきたいところ……そうした人たちに情報が届きにくいのが課題ですが、今年度、和歌山市では同様の講演会などを開く予定とのことですので、またFFPWでもお知らせします。
*1 環境保全型農業 (農林水産省HPより)
環境保全型農業とは「農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」です(環境保全型農業の基本的考え方より)。
食料農業農村基本法においても、国全体として適切な農業生産活動を通じて国土環境保全に資するという観点から、環境保全型農業の確立を目指しています。