7月8日(月曜日)、和歌山市内で有機農業や自然栽培などで稲作を行っている圃場(田んぼ)の見学会を行いました。
この見学会は、和歌山市内の有機給食の推進と「いのち育む 有機稲作勉強会 *」の成功を目指して集まった稲作農家を中心とする有志らが提案したものです。見学先は、数年~数十年の間、化学肥料や化学合成農薬を使わずお米を作られてきた農家さんの圃場です。
* 2024/2/23 和歌山JAビル和ホールにて開催>https://woca.jpn.org/w/event2024
以降、(メモの不備により現地や懇談の場で交換された専門的な知識は省略させていただきつつ)写真を交えて報告します。
午前9時、和歌山市内某所に集合したのは稲作農家7名、JAわかやま、和歌山市役所、農林水産省近畿農政局、和歌山市民(報告者を含む)など、総勢18名でした。当時は梅雨の最中にもかかわらず、真夏のような晴天が続いており、予定した日も炎天下となりました。
最初に向かったのは、集合場所に近いAさんの圃場。見学させていただいたのは、有機JAS認証を取得されている4つの圃場で、合計面積は4反(40a)ほど。ここでは今年、「いのち育む 有機稲作勉強会」の講義の中で紹介された「2回代かき」を実践されたとのこと。栽培品種はキヌムスメ。圃場に入れる肥料は“ぼかし”のみ。中苗3本植えで当日の水の深さは4cm程でした。
AさんはEM菌を活用した栽培法を行っている「紀州大地の会」の有機米部会に所属されています。部会では、できたお米のおいしさを数値化する食味値を毎年計測しており、消費者からも「美味しいお米」と評判です。
次は紀ノ川の南側、布施屋付近の平らな広い田園地帯にあるBさんの田んぼ。広い水路の横に2枚(3反と1反半)の田んぼがありました。品種はニコマル。代かきは1回で、苗はポットで1本苗を育てて45日目辺りで植えたとのこと。
肥料は秋の収穫後に深くすき込むワラと夏の田んぼの生き物の亡骸のみで、深水する(田んぼに水を深めに入れる)ことで雑草の生育を抑えるという自然栽培です。見学した日は1本苗のためジャンボタニシの被害に遭ったところが抜けていました。当日は田植え(6/20頃)から日が浅く、ひょろひょろと頼りなく見える苗ですが、植え付けからの分けつは早く、毎年収穫期が近づくと周囲の慣行栽培の稲に追いつくそうです。収穫量も反あたり約480kgあるそうで、自然栽培ながら全国平均(2023年533kg)にも追いつきそうです。
この田んぼの特徴は水の中の生き物の豊富さでした。みんなで田んぼを覗いて驚きの声を上げてしまいました。Bさんの田んぼはここ以外にいくつもあり、全部で5町歩(500a)あるとのことでした。10年以上化学肥料や化学合成農薬不使用で栽培されており、まだ面積を増やす余力があるそうです。
続いて紀ノ川の北側、宇田森のCさんの田んぼを見学しました。Cさんもポット苗を育ててから基本1本植えです。ポットに入れる種籾は早生品種で3~5粒、晩稲品種で1~3粒ずつ。ニコマルに加えて、亀の尾やアサヒという原種米の品種も栽培されています。
原種の稲は強いですが、反あたりの収量は少なめとのこと。ジャンボタニシの被害は多少あったそうです。栽培面積は合計2町2反(220a)ほどあり、農薬や肥料は使いません。
近くにDさんの田んぼもあり、続いて見学しました。
Dさんが栽培されているのはニコマル、ヒノヒカリ、亀の尾という品種で、一部はビールの原料になります。合計栽培面積は1町7反(170a)ほどで、同じく農薬や肥料は一切使用しません。
12時になり、予約してあった市内コミュニティセンターの会議室で昼食休憩を取り、食後しばらく歓談を行いました。
参加された農家さんたちは化学肥料や除草剤を含む化学合成農薬を使用しない点では共通していますが、それぞれの栽培法は違いがあるため、活発な意見交換がありました。また、参加者の殆どは国内自給率の低さを憂慮しており、国や地方公共団体が進める農政への要望的な話題にも及び、休憩時間はあっという間に終了しました。ちなみに、この日に予約購入した弁当は、和歌山産の有機食材を使ったものでした。
午後一番は田尻のEさんの圃場のひとつを見学しました。EさんはAさんと同じ有機米栽培グループ「紀州大地の会」のメンバーで有機JAS認証を取得されています。
残念ながら当日はEさんの立ち会いが叶わず、ご本人からお話を伺うことはできませんでした。
その後、和歌山市北西部の梅原まで足を伸ばし、FさんとGさんの圃場を見学しました。
辺りは、住宅街に囲まれるようにしてモザイク状に田んぼが残っています。このエリアをグーグルアース(衛星写真)で見ると、田んぼ(緑色の場所)の少なさに驚いてしまいました。
Fさんの圃場は全部で1町8反(180a)。品種は、ハツシモ、ヒノヒカリ。
1982年から農薬不使用栽培で稲作を開始し、今年で43年目のベテランです。ユニークなところは、一部の田んぼで合鴨農法を実施されていることです。田植えの後で合鴨のヒナを放ちます。成長した鴨を入れると苗が踏みつぶされてしまうので、田植え後2週間ぐらいの田んぼに孵化して同じくらいのヒナを放つのだそうです。合鴨が野生動物に狙われるのを防ぐ電柵が張られていました。
Fさんとは農家仲間でもあるGさんの田んぼは2反(20a)。同じく農薬や化学肥料は使用していません。品種はミヤタマモチ、あいちのかおり。
ご自身のお考えがあって、水はかなり浅めに張られていました。除草は、田んぼの傍にあった昔風の道具で行っているとのことでした。
圃場見学は、最も気温が高くなる15時ごろに終わりました。
今回見学させていただいた圃場の収穫前にも巡回を行う予定です。またご報告します。
報告:な&ゆ
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